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余計なものはない方が良いのです。

「無いよりはあった方が良い。」


これまでよく耳にしてきた言葉です。


仕事・お金・食べもの...などモノが無かった時代には、何でも”無いよりはあった方が良い”という考え方が一般的でした。


近年のミニマリストという言葉の流行には、それまでと違う「余計なものはない方が良い」といった考え方の広がりがあるのだと思います。


そこにはモノやお金を必要以上に持つことへの嫌悪感があるのだと思います。


少し前のTVドラマで会社経営者の男性が高級料理を一口食べただけでどんどん料理を消費していくシーンが描かれていました。「こうやってお店に沢山のお金を落として経済に貢献しているから良い事なんだ。」というセリフが印象的でした。


経済を回すために無理矢理に消費することが良いことだという価値観が定着して久しい世の中で、下品なほどにお金やモノを持つ人が話題になるようになり、それに対するアンチテーゼとしていわゆるミニマリズムが生まれたのだと思います。


元々のミニマリズムとは1960年代にアメリカで生まれた美術・芸術分野における表現スタイルであるが、それまで当たり前だった差別・偏見・格差といった旧来の価値観が大きく変化していく社会情勢の影響があったと思われます。


現代社会においても行き過ぎた物質・拝金主義は60年代の米社会を彷彿とさせる部分があり、しかもそれが世界規模で広がりつつあるようにも感じます。


コンビニエンスストアやスーパーでは毎日大量の食料品が廃棄され続ける反面で、相変わらず食糧難で飢餓に苦しんでいる人がいます。


世界の飢餓人口は最大8億1100万人で毎年世界では約26億トンの穀物が生産されています。それが世界人口の77億人に平等に分配されていれば、1人当たり年間340kg以上食べられることになります。ちなみに日本人が実際に食べている穀物は年間154kgです。


人はもっと生活を便利にしたいという欲求から、テクノロジーの進化によって自分の能力以上の成果を上げることが容易になり、とても便利で豊かになりました。しかし、その反面ではテクノロジーによる恩恵を受けれない人や犠牲になっている人も大勢います。


そのような偏った現代社会に対するカウンタカルチャーとしてのミニマリズムのはずが、現在のミニマリストは主にファッション用語としての単にシンプルなスタイルを好む人のことを指すことが多いようで、それ自体も一種の情報として消費されている面も否めません。


ハイカルチャーに対する批判的な考えとしてのカウンターカルチャーにこそ、新しい価値観や文化が生まれる要素があるのだとすれば、その批判的要素を失くした現在のミニマリズムはもはや新しい価値観や文化の源泉ではなく、単なる情報やスタイルの一つになってしまっているのではないでしょうか。


人も生き物である以上は食物連鎖の中で生きていますが、動物は自身が生きるために必要とする以上のモノを求めないのに対して、人だけはそれ以上のモノを求め続けます。


人の権利を奪ってでも自己実現を優先することが、是の世の中になってしまう事ほど不幸なことはありませんが、人にはその危険性が孕んでいることは、歴史や宗教や哲学や心理学などの様々な文献からも知ることができます。


だからこそ人には自制心が必要であり、倫理観が道徳心を育むことがもっとも大切なのです。


残念ながら現在の日本の教育の中でそのことを学ぶ機会はとても少ないように感じますが、その結果が社会においても倫理観よりも利益を優先する個人や企業が多いようにも思います。


「お金はないよりもあった方が良い」多くの人がそのことを当然のように思っているかも知れませんが、果たして本当にそうでしょうか。


人間の性向の基本をなす「七つの大罪」は中世から続く美術のテーマですが、その認識の仕方や解釈が時代によって異なります。資本主義社会では金銭欲は必ずしも悪徳ではなく、強欲や嫉妬、あるいは暴食の欲望は、現代の消費社会においては資本主義経済の推進源とも見なされてる側面もあります。


多くの大罪が悪徳性と同時に人の根源的な楽しさに基づく健康的な欲望という両義性を持ち、19世紀に消え去ったと思われた「七つの大罪」が実は現代においても社会が正常に機能していくための大切な模範となるのではないでしょうか。


 

『居心地のよい灯りと暮らす』


灯りは暮らしに美しい情景を生み出し、何気ない日常を特別なものにしてくれるもの。私たちは照明とインテリアデザインで豊かな灯りのある暮らしをご提案します。


IN THE LIGHT Lighting Design & Interiors

熊本県熊本市北区武蔵ヶ丘1-15-16




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