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美しい天井を意識する

更新日:2022年5月10日

夜の町並みにひときわ明るく輝くコンビニエンスストアは、全面ガラス張りの店内に道路に並行する形でLEDの光を配置されています。細長い照明を垂直に配置した場合と比べ、同じ光の量でも外から見たら格段に明るくなります。

ショッピングモールや百貨店も同じような照明計画が多いのですが、それら殆どが利便性や効率性を重視した結果といえるでしょう。


反面、ハイクラスのホテルや洒落たカフェや飲食店はどうでしょう。天井に無数のダウンライトが埋め込めれていたり、配線ダクトが張り巡らされたりしているところは少ないはず。

そのような空間には必要な場所に必要な光が配置され、必要以上に明るくすることもありません。明るければ明るいほど良いといった照明では折角の雰囲気も台無しになってしまいます。


最近の住宅は一戸建もマンションもダウンライトばかりです。かつて一世を風靡した蛍光灯のシーリングライトは姿を消し、補助的な役割でしかなかったダウンライトが主役です。その小さな光源から発する光は当然ながら蛍光灯のように部屋中を明るく照らすには向いていません。結果的に無数のダウンライトが天井を埋め尽くすことになるのです。


これまでの住宅の照明といえば、なるだけ少ない数でできるだけ明るい方が良いといった照明計画がほとんどでした。それがダウンライトに変わったせいで天井には無数の穴が開いています。夜になるとその穴の数だけ天井から眩い光が見えるのです。


家は一日の疲れを癒す大切な場所でもあるはず。利便性や効率性を重視した空間よりも雰囲気がよくリラックスできるような住まいの方が何倍も心地が良いと思います。


海外のインテリアを見てみると違いがよく分かると思いますが、天井に無数のダウンライトが埋め込まれた住宅は案外少なく、天井にある照明の数が少ないことに気付くと思います。

代わりに壁付照明やフロアスタンド、テーブルランプといったものを複数置いてあり、日本でもハイクラスのホテルでは以前からそのような照明が当たり前に使われています。


日本の住宅の天井高は2,400〜2,700mm程度。それほど高くないために照明からでるグレアという不快な光が目に入りやすく気付かないうちに家の中でストレスを感じた状態になっています。ホテルが家よりもリラックス出来る理由は案外、照明の違いによるところも大きいのです。


フロアライトやテーブルランプには電球を覆うシェードがあることでグレアを防いてくれます。

壁付照明も電球が剥き出しのものは少なく、そうして出来上がった照明は少し暗めに感じるかもしれませんが、天井についた照明よりも手元に近い分かえって見やすく便利で、グレアによる眩しさも感じることもありません。そのような灯りの空間では落ち着いた雰囲気と合わせてリラックス効果も高くなります。


夜が長い北欧諸国では特に照明は大切です。家にいる時間が長い北欧の人々は照明やインテリアへの関心が高く、デンマークは灯りの文化が最も発達している国といっても過言ではないでしょう。


1874年創業のデンマークの照明メーカー、ルイスポールセンはグレアフリーをテーマに、1920年代には近代照明の父といわれるポール・ヘニングセンと共同でPHランプを発表するなど世界中の照明に大きな影響を与え続けています。


ルイスポールセン・ジャパンでは、照明セミナーなどを通じて以前から住まいの照明にも多灯分散を推奨されています。しかし、一般の住宅でルイスポールセンの照明を使う方が少ないこともあり、また効率や予算重視の日本の住宅ではなかなか浸透していかないのが現状です。


日本の住宅も少しづつデザイン性が求められるようになってきました。今はまだ照明といったところまでは意識がいっていなくても、徐々に住まいに求められる要素も変わっていくものだと思っています。


機能や効率も重要かもしれませんが、人の暮らしの中でもっとも大切なことは暮らしに心地よさや愛情を感じることではないでしょうか。情報やモノが溢れる時代だからこそ本質的なものの大切さがわかるようになっていくのだと思います。


ノイズのないすっきりとした美しい天井を見ると、本当の豊かさとは何かといった問いに答えてくれるような気がするのはきっと私だけではないはずです。



photo by Finn Juhl at his house


『心地よい灯りのある理想の暮らし』


照明から考える家づくりをコンセプトにした美しい灯りのある暮らしの提案。豊かな灯り文化と上質なインテリアデザインでお客様の理想の住まいをかたちにします。


-IN THE LIGHT Lighting Design & Interiors-

熊本県熊本市北区武蔵ヶ丘1-15-16


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