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Less is more

「檐のきを深くし、壁を暗くし、見え過ぎるものを闇に押し込め、無用の室内装飾を剥ぎ取ってみたい。それも軒並みとは云わない、一軒ぐらいそう云う家があってもよかろう。まあどう云う工合になるか、試しに電燈を消してみることだ。」昭和初期に書かれた谷崎潤一郎氏の随筆「陰翳礼讃」の一節。


当時、欧米化によって変わりゆく暮らしの中で、忘れられていく日本の風情を謳ったものです。それから100年以上が経ち、私たちの暮らしは昼でも夜でも隈なく明るいというのが一般的。変わり映えのしないただ明るいだけの住まいは、効率や合理性ばかりを重視する現代人の思想が反映したものだが、それはまるでインスタント食品の並んだ食卓ように味気のないものになってはいないだろうか。


「暗いより明るい方が良い。」そう思うのは普通のことかも知れないが、ほどよい暗さが心地よいこともある。曇天の日は昼間でも薄暗いものだが、薄いグレーの空から降り注ぐ仄かな光もまた晴天の明るさとは違った味わいがあり特別だ。日本人が四季折々の景観や自然の美しさに豊かさを感じるのならば、天候や時刻による光の変化もまた同様である。


夜の月明かりも満月と三日月では全く違うのだが、それを暗いの一言で済ませてしまうのはあまりに侘しいと思う。私たちは日々の忙しさにかまけ、大切なことを見失ってはいないだろうか。真っ白な天井や壁に囲まれた室内を燦々と照らすライトは、周囲のレフ板効果によって光は万遍なく拡散され、かえってその存在すらも忘れてしまう。


同じ灯りでも蝋燭は風が吹けば消えてしまう程の儚いもの。その儚さ故につい見惚れてしまう。蝋燭の灯りに癒される人もいれば、寂しさや切なさを感じる人もいる。


光は思っているよりも繊細なものなのだ。




LIVING WITH LIGHTS | 心地よい灯りのある暮らし


IN THE LIGHT Lighting Design & Interiors

861-8001 熊本県熊本市北区武蔵ヶ丘1丁目15-16


Youtubeチャンネル ►► https://www.youtube.m/@inthelightinteriors/


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