マンションリノベーションの資産価値
- Yuichiro Noguchi
- 6月24日
- 読了時間: 8分
更新日:6月28日
マンションリノベーションが、必ずしも資産価値を上げるわけではありません。適切なリノベーションは資産価値を維持・向上させる可能性がありますが、住人の趣味や個性が色濃く反映されたリノベーションや、安っぽい素材や設備のリノベーションは、逆に資産価値を下げる可能性があります。
中古マンションの資産価値は、築年数が経過する毎に下落していきます。但し、常に一定の割合で資産価値が下落するのではなく、一定期間を経過するとそこからはほとんど下がらなくなります。
マンションについて実際の下落率は下記の通りです。
・新築~5年:㎡単価74.37万円
・築6~10年:㎡単価61.17万円(上段から17.8%下落)
・築11~15年:㎡単価56.46万円(上段から7.3%下落)
・築16~20年:㎡単価46.73万円(上段から17.2%下落)
・築21~25年:㎡単価31.55万円(上段から32.5%下落)
・築26~30年:㎡単価29.97万円(上段から5.1%下落)
・築31年以上:㎡単価29.79万円(上段から0.6%下落)
新築から25年まではある程度の幅で下がっていきますが、築26年以降の下落率は非常に小さくなっています。マンションは築25年を過ぎた頃から資産価値が下がらなくなるとはいえ、物件による違いはあり、中には人気のあるヴィンテージマンションなど、新築から数十年以上が経過していても、高い価格を維持しているものもあります。
比較的古いマンションほど、都心部など利便性のよい場所に建っていることがほとんどです。建て替えによって、新築マンションが建てられることもありますが、これまで実際に建て替えになった事例は、全国でもほんの僅かしかありません。そのため、駅近のマンションは希少性があり、将来にわたって需要が見込めるため、資産価値を維持しやすく、また、スーパーなどの商業施設や、銀行、病院、クリーニング店、飲食店、公園など、周辺環境も大切な要素です。
それでは、リノベーションを実施したマンションの資産価値はどうでしょうか。
マンションリノベーションには、業者によるリノベ済み再販物件と、個人で購入してリノベーションをする場合があります。リノベ済み再販物件とは、一般的に買取再販業者といわれる不動産会社が物件を購入し、リノベーション後に販売しているケースです。築30年以上が経過した築古の手頃な価格のマンションをリノベーションしている場合が多く、外観は年代相応ですが、室内が新しくなっているので、比較的リーズナブルな価格で立地の良い中古マンションを買うことができます。築40年以上が経った古いマンションの場合、元々は3DKや2DKといった昔の間取りが多いのですが、リノベーションによって2LDKや1LDKのといった今時の間取りに変更されていたり、キッチンやユニットバスも新品に交換してあるので、それなりに快適に暮らせます。また、実際に購入する物件を見て検討できるために安心感もあります。
外観は古くても、間取りが使いやすくなっていたり、設備が一新されていたりしますので、一見すると良さそうに感じますが、余程で魅力的な物件でない限りは差別化しづらく、販売価格もそれなりに安くないと売れません。また、販売価格を安くするために、かなり築年数の経った価値の低い物件がベースになっていたり、リノベーションコストを抑えるために、安い建材が使われていたり、見える部分しか改修されてなかったりなど、表面的に新しいだけで、本質的な価値がおざなりになっている場合があります。リノベ済みマンションは、築浅のマンションよりも詳しい知識や目利きが必要になってきます。
一方、個人で購入してリノベーションをする場合は、自分の好きなように作り変えることができるのが最大の魅力です。趣味やライフスタイルを反映した個性的な間取りや内装を選ぶことができ、インテリアやデザインにこだわりがあり、壁紙や塗装の色、床のフローリング材やタイルから、水栓金具に至るまで、すべて好みに合わせて作り上げることが可能です。その分、費用はそれなりにかかりますので、基本的には予算に余裕がある人向けといえるでしょう。
但し、オーダーメイドで作られた豪華な内装や設備だからといって、単純に資産価値が上がるわけではありません。趣味が合わなければ、他の人には何の価値もありませんし、ラフな仕上げや安っぽい作りなど、建物の外観にそぐわない内装や設備はかえってマンションの資産価値を下げることにもなりかねません。特にヴィンテージマンションのような、元々の資産価値が高いマンションは、購入金額もそれなりに高額になりますので、その価値に相応しいリノベーションが求められます。
個性的な物件もニーズによっては、類似物件との差別化ポイントとなる可能性があります。人気のある有名建築家やインテリアデザイナーが手掛けた住宅は、オリジナルに近いほど価値が高く、そのようなマンションは前述とは別の意味でも資産価値があります。建てられた時には無名でも後々有名になったデザイナーが手掛けていたり、亡くなった後で評価されたりして、絵画などの美術・骨董品と同じような価値を持つものも出てきます。
しかし、いずれの場合も、基本的には清潔感のあるシンプルで上質な内装が好まれやすい傾向にあることは間違いありません。無垢材や突板といった上質な自然素材を使ったリノベーションは、新建材では得られない経年変化でより深みのある雰囲気になり、セールスポイントになる場合があります。ビニールクロスは経年により劣化していきますが、塗り壁だと長く良い状態を保ち、上から塗りなおすことも可能です。新築物件では得られない経年による味わいを感じられるのも古いマンションの魅力の一つです。
将来のリセールバリューを考慮したリノベーションでは、実用性の高い設備を取り入れることもポイントの一つです。一般的なマンションの住宅設備機器は、一般的なメーカーの標準仕様のものが採用されていることがほとんどですが、ハイグレードなキッチンやオーバーヘッドシャワーやジェットバス付きのお風呂など、付加価値のある設備は高級感を演出し、マンションの資産価値を高めてくれます。
マンションリノベーションの際に注意したいポイントとしては、建物の価格やグレード(価値)と室内のグレードをなるだけ適正なものにすること。資産価値の高いマンションは、元々が高級マンションとして建築されているので、上質な内装やハイグレードの設備が始めから備わっており、建物の維持管理にもそれなりの費用がかかります。しかし、それらの結果として高い資産価値が担保されるのです。
築30年以上が経過した普通の中古マンションは、築浅の中古マンションと比べると、物件の購入価格はかなり手頃です。その差額分をリノベーションに充てることで、同じくらいの価格で普通のマンションよりもオシャレな内装のマンションや、ハイグレードな設備のマンションを手に入れることも可能です。但し、普通のマンションの場合は、リノベーションを施したからといっても、売却時にそれほど高く売れ訳ではありません。一般的なマンションの購入層は、内装やグレードよりも価格を重視する傾向にありますので、他人の趣味が色濃く反映されたリノベーション済みのマンションよりも、手頃な価格の中古マンションやリノベ済み再販物件の方が魅力的に映るかも知れません。
基本的に良質なマンションは、適切なリノベーションによって価値を上げることは可能ですが、普通のマンションのリノベーションは、ニーズがなければ個人的な趣味で終わってしまいます。そこに数百万〜1千万円の出費は、けして安くはないでしょう。また、極端に価格の安いマンションは修繕積立金が不足していたり、管理が自主管理になっている場合もあるので、長く住んだり、資産としてマンション購入を考える場合には注意が必要です。さらに建物の状態が悪く、将来建物自体が取り壊しになってしまえば、それこそリノベーション自体も無駄な投資となってしまいます。
このようにマンションリノベーションは、リノベーションする立場から見たら新築よりも手頃な価格で、自分好みの部屋を手に入れることができるので、一見とても魅力的に思えるのですが、売却する立場(リノベ物件を購入する立場)から見たら、ただでさえ築年数が古い上に、リノベーション自体にきちんとした価値を見いだせない場合は、投資額(マンション取得価格+リノベーション費用)に見合った価値をつけるのは、かなり難しいということが分かると思います。
一般的に中古戸建住宅の場合は、築30年以上が経過した建物は資産価値がゼロになるといいます。土地にのみ価値は残りますが、古い建物があることによって、その価値がマイナス査定となる場合が多く、マンションのリノベーションも、時代遅れの内装や個性的過ぎる内装は売却時に苦労することになりかねません。
マンションを選ぶ際には、いかに安く購入するかよりも、いかに次世代へ受け継ぐことができるかを意識することは大切です。本来、きちんとしたリノベーションは建物の耐用年数を伸ばし、流行に左右されない機能的で美しいデザインは、いつの時代になっても魅力的です。そのような価値のある建物を、住み継いでいくことが、本当の意味での資産になるのではないでしょうか。

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