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住まいの灯りを考える

更新日:2021年2月22日

当スタジオ兼ギャラリーには、沢山のいわゆる名作照明といわれるものが展示されています。デンマークやイタリア・フランス等で1950〜70年代くらいまでの、いわゆるミッドセンチュリー期にデザインされた照明やインテリアが中心です。


1950年代頃は第二次世界大戦後でまだまだ物資が足りていなかった時代です。当然ながら照明も今ほど明るくなく、当時の暮らしぶりはほの暗い室内に白熱灯のオレンジ色の灯りが窺い知れます。1970年代くらいになると蛍光灯の普及に伴って、昼間のように隅々まで明るく照らされた室内が多く見られるようになっていきます。

それから現在までほとんどのお宅でシーリングライトやダウンライトによって、部屋全体が明るく照らされているのではないでしょうか。


白熱電球は1920年頃から普及し、「近代照明の父」といわれるデンマークのポール・ヘニングセンによって様々な照明理論や斬新なデザインが発表され、現在においても今なお引き継がれています。


当時、ドイツのバウハウスに在籍していた建築家やデザイナーが光の質よりも、幾何学的な器具の形態に重きを置いた照明器具をデザインしていたのに対し、ポール・ヘニングセンらデンマークのデザイナー達は光の質そのものを重要視し、単に造形の美しさだけでない、光の理論や哲学を元にしたデザインによって秀悦な照明器具を作り出しています。そのような歴史の文脈の中で生まれたデンマークの照明の多くが、その美しい光とフォルムが当時と変わらないまま、その多くが今だにデンマークで生産されて世界中に流通しています。


本当に素晴らしいデザインのものは、モノの本質をきちんと捉えた上に、そこから生まれる美しい造形を持っていて、そのような秀作なものは時代を超えて受け継がれ、人々に愛され続けるのです。


照明は単に明るく照らすといった機能だけでなく、美しい灯りは人々の暮らしに寄り添い、美しい情景を作り出します。雰囲気のあるカフェや素晴らしいレストランには必ず美しい灯りがあり、”豊かな灯りのある空間”そこで過ごす特別なひとときは人生においてかけがいのないものになります。


但し、ここでいう「豊かな灯り」とは、高級ブランドの照明器具のことではありません。先に挙げたカフェやレストランは必ずしもそのような照明器具を使っているわけではないはず。それらのお店に共通しているのは、天井から降り注ぐ昼間のような明るい室内ではなく、灯りを上手につかった光の奥行きや陰影を感じる空間。今でも蝋燭の灯りを使って演出しているようなお店は、特別に上質で雰囲気のある場所に感じるはずです。


太古より灯りには人の情景に訴える不思議な力があり、私たちの暮らしに灯りは不可欠なものです。それ故に灯りとどのように関わるかは、私たちの生活の質を大きく左右します。

これまでの明るければ良いといった物質的な価値観から、人の感性に訴えるような「豊かな灯り」の考え方を取り入れてみるのはいかがでしょうか。




ルイスポールセン


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