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ヴィンテージ・マンションのススメ

更新日:2021年2月22日

「ヴィンテージ」というと一般にはあまり馴染みがない言葉かもしれませんが、その元々の由来は良質のブドウが収穫された当たり年のワインで、希少価値が高く、高価で年代物の逸品のワインを称して「ヴィンテージ・ワイン」という言葉が使われていました。

現在ではクルマやファッションなど色んなものにも「ヴィンテージ」という形容詞が使われるようになりましたが、住宅において「ヴィンテージ」というと、ごく最近になって聞かれるようになってきたように思います。


その中でも東京都心部を中心に「建築から数十年経ても資産価値を保っているマンション」、いわゆる「ヴィンテージ・マンション」がいま一部で注目されています。最近ではそのまま「ヴィンテージ・アパートメント」というタイトルで、都内のヴィンテージ・マンションを紹介している本が発売されているほどです。


興味深いのは、日本の住宅産業において長年続く新築至上主義からようやく新しい価値観が生まれようとしていることです。欧米においては以前から中古住宅を購入してリフォームをして住むことが一般的なのに対して、日本では持ち家を買うなら新築といった考えが当たり前でした。また中古を買うにしても出来るだけ築浅の物件を選ぶなど、築20年以上も経った物件など殆ど見向きもされなかったように思います。


しかし、古い建物でも先に述べた「ヴィンテージ・ワイン」のような当たりの建物が存在します。それは立地が良く(高級住宅街など人気のあるエリアに建てられている)、建物のデザイン性が優れていて、きちんと維持管理がされているような建物です。そのような建物になると一軒家よりもマンションの方が比較的多いかとは思いますが、そのような物件が近年注目され始めているのです。


もちろん書籍などで紹介されているようなマンションは、それなりの価格のものばかりにはなりますが、少し目先を変えるとヴィンテージとまでは言わなくても、案外手頃な価格で良質な古いマンションは身近でも見つかるはず。

これまで中古物件を探している人でもどちらかというと「築10年以内の比較的新しく綺麗なマンション」を求めている人ほとんどだったと思いますが、「年代を問わず良質なマンション」という新しい価値観で住まいを探してみると、これまでは気づかなかったような魅力的な物件が見つかるのではないでしょうか。


日本におけるマンションの歴史は比較的浅く、欧米のような築100年以上のマンションなどは皆無です。先日、銀座の一等地に1920年代頃に建てられた建物を紹介する番組をやっていましたが、その当時の最先端の技術と欧米に倣ったアールデコ調の建物は、今ではとても貴重で日本国内に現存するだけで価値があります。またそれは築100年近く経つ建物に現在でも住むことが可能であることも意味しています。


確かに耐震など老朽化の問題は否定しませんが、だからと言って必ずしも古い建物よりも新築が良いのだとも言えないのではないでしょうか。これからは新しい古いではなく、そのモノの持つ本質的な価値を見極めながら、良いものを長く使ったり、残していくことの意味を考える時代が来ているのだと感じます。



同潤会アパート


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