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執筆者の写真ノグチユウイチロウ

安い土地を買わない方がいい理由

更新日:10月30日

マイホーム計画で最初につまづくのは土地を探しではないでしょうか。まずは家を建てるには土地が必要です。土地探しは初めての人がほとんどだと思いますが、最初に自分の住みたい街を探すと思いますが、住みたい街には思ったような土地がなかったり、あったとしても想定よりも高額だったりして、理想的な土地はなかなか見つからないのが現状です。


そもそも自分が住みたいと思う場所は、他の人も住みたいと思うもの。人気のある街は買い手が多いこともありますが、住んでる人も余程のことがない限りは売ることもありません。美味しいものを食べるのに、待たずにすぐに食べたいというのと同じことで、本当に良い土地を探そうと思うなら、時間をかけて地道に探すのが正解です。


家を建てることが目的だから、土地は早く安く見つけて、建物にお金をかけたくなるのが普通ですが、安くて良い土地を探そうと思っても、売る側は少しでも高く売りたいものです。人気のある土地は相場より高く、売れない土地は相場より安いというのは当然です。


土地探しで一番失敗するのは、今、売りに出ている土地の中から選ぶことです。そもそも、自分が土地探しをする時点で良い土地が売れ残っていることは滅多にありません。住まい探しを始めた時に売りに出ている土地は、基本的に売れ残っている土地と思った方が間違いありません。


売れていないということは高過ぎて買い手がつかないか、人気がない場所や立地が悪いなど、さまざまな理由が考えられます。価格が高過ぎるといった土地の場合、値段を多少下げればすぐに買い手がついたりします。だからこのような土地がいつまでも売れ残っていることはあまりありません。つまり、家探しを始めた時点で売りに出ている土地は、ほとんどが人気がない場所や立地などの条件が悪い売れない土地である可能性が高いのです。


なかなか良い土地が見つからず、そのような方々が辿り着くのが、建築条件付きで住宅会社が決まっている分譲地です。新しく分譲地として開発された土地はきちんと整備され、家を建てるのに丁度良いように作られています。もちろん分譲地内には良い土地とそうでない土地があるものの、相対的には家を建てるには丁度良い土地になっています。


住宅会社は家を建ててなんぼです。土地は家を建てるために必要なだけで、土地で儲けている訳ではありません。だから住宅会社は安い土地を見つけて、建物に予算を使ってもらおうとします。家を建てる人も立地やロケーションにこだわりを持つ人よりも、建物にこだわりたいという人の方が圧倒的に多いはずです。結果的にお施主様も住宅会社も安い土地に建てる方が正解だと考えるのです。


安い土地を買って家を建てることは、将来に大きなリスクを背負うことにもなりかねません。どんなに資産価値のある家でも人気のない土地に建ててしまっては元も子もありません。マイホーム計画において最も重要視しなければいけないのは、建物ではなく、いかに良い土地を手に入れるかということではないでしょうか。


注文住宅の最大の魅力は、自分の理想の家を建てることに尽きるでしょう。しかし、逆の立場からみたら、他人の理想の家が魅力的であるとは限りません。家族構成やライフスタイルの違う人にとって、他人が建てた家が理想の家であることの方が稀でしょう。家は初めて建てる人がほとんどで、それゆえ家づくりで後悔する人は後を断ちません。家は3回くらい建てないと良い家が建たないといわれていて、業界では40代の建築家はまだまだヒヨッコだといわれるほどです。


また、一戸建ての建物自体に殆ど価値が付かないのは中古住宅市場をみれば明らかです。20年の価値しかない家を35年ローンで購入しても、20年後の資産価値は実質土地の価格だけです。しかも古い家が建っている時点で売却時にはマイナス査定になってしまいます。


それでも安い土地に家を建てる人は大抵、一生住み続けるのだから関係ないというのですが、35年も住宅ローンを払いづつけることは思っている以上に困難です。共働きが当たり前の時代ですが、夫婦ともに35年後も今の仕事を続けられる人はどれくらいいるのでしょう。何かあった時に困らないだけの余裕があれば良いですが、そのような人は決して多くないでしょう。何かあった時にマイホームを手放すことになる人は少なくありません。実際に一戸建ての売りに出ている数は相当数あり、その多くが何らかの理由で手放さなくてはならなかったものです。


戸建てと比べるとマンションは売却しやすく、もともと万人に受け入れられるような建物や間取りになっていて、建物の耐用年数も60年とも70年ともいわれます。但し、マンションも戸建て同様に立地がとても大事で、人気エリアのマンションとそうでないマンションでは売買価格や売れやすさには雲泥の差があります。例えば、人気エリアにある富裕層に方々が買うようなマンションは、かなり古くてもそれなりの価格ですぐに売れてしまいますが、どこにでもあるような普通のマンションはそう簡単には売れません。


家を建てる時に売却することを前提に計画する人は稀でしょう。しかし、売却しやすい家は資産として有効です。何かあった時はもちろんですが、条件の良い不動産なら買った時よりも高く売れることもあるので、しばらく住んだ後に、もっと良い家に住み替えする方もいるくらいです。


マイホームは一生に一度の大きな買い物ですが、意外と勢いで決めてしまう人が多いようです。買い直しがきかないからこそ、慎重に選ぶ必要があると思います。


巷では資産価値の高い家づくりといわれる住宅会社もありますが、実際には普通の家が高く売れることはまずないでしょうし、流行のデザインや最新設備が満載の家は時代とともに風化していきます。


本当の意味で「資産価値の高い家」は「高く売れる家」です。つまり、他人から見ても魅力があり、年数を経過しても変わらない価値のある家だといえるでしょう。


安藤忠雄氏が設計した大阪市住吉区にある「住吉の長屋」は竣工から50年近くが経とうかとしています。当初は雨ざらしの廊下が住みづらいとか、色々言われたものですが、今でも当初のお施主様が住み続けられています。当時、一千万円程で建築されたそうですが、今後、この家が売却されるとしたら、一体いくらになるのかとても興味深いところです。もし今後、この家が売却されるとしたら購入希望者が殺到するのではないでしょうか。





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