• Yuichiro Noguchi

名作照明と暮らす『PHランプ』

更新日:11月20日

 いつの時代でも良いデザインの照明は沢山あるが、本当に名作と呼べるものは限られています。良いデザインの定義が人それぞれなのに対して、名作という称号は自他共に認められるものにしか与えられません。

 それでは「名作照明の定義」とは何かと云えば、それは「時代を超えても愛され続ける」ということではないでしょうか。


 1925年のパリ万博、電球が発明されて間もない時代にデンマークのポール・ヘニングセンによってデザインされた6枚の円盤状のシェードが電球を覆うデザインの照明『パリ・ランプ』が発表。しかし、そのデザインは洗練されておらず、電球の光を銅合金のシェードがそのまま反射するだけのものでした。

 製作を担当したルイスポールセン社とさらに改良を加え、より完成度の高い照明を生み出します。それが現在でもルイスポールセンで製造・販売されている『PHランプ』の最初のモデルになるのです。


 1920年代の照明器具の多くは電球のフィラメントが直接見えていた為に、室内が明るくなるものの光による目に眩しさを感じるものでした。そこでポール・ヘニングセンが目指したのがグレアフリーな”眩しくない照明”を作ることです。

 デンマークを始めとする北欧諸国は日照時間が短く天候も悪いこともあり、古くから光を大切にする文化が育まれてきました。そのような北欧諸国だからこそ、照明に拘ることは必然であり、それが暮らしの質を高めることにもなるという発想を生み出したのだです。

 

 眩しさを排除し光の質を重視した人に優しい光を追求する姿勢は、北欧の照明に共通する最大の特徴とも言えるものです。同じ頃にドイツ・バウハウスに在籍した建築家やデザイナー達が幾何学的な形態を重視したのに対して、コーア・クリント、ポール・ヘニングセン、アルバ・アアルトといった北欧の建築家やデザイナーらは人に優しい光環境を整えることに重点を置いて照明をデザインしていました。

 中でもポール・ヘニングセンは、その優れた照明理論や哲学から「近代照明の父」と呼ばれ、代表作『PHランプ』の対数螺旋曲線が用いられたシェードから放たれる優しい光からは、単に造形だけではない本物の美しさを感じるものです。


 独自の発想から生まれたポール・ヘニングセンの『PHランプ』は、当初から多くのモダニストらに支持され、デンマークのアルネ・ヤコブセンやフィン・ユール、ボーエ・モーエンセンらを始め、20世紀を代表するドイツの建築家ミース・ファン・デル・ローエやフィンランドのアルバ・アアルトといった数多くの巨匠たちが手掛けた建物や自邸でも使われています。


 「人に優しい照明」を言葉で表現するのは簡単ですが、実際にそれを形にするのは難しいものです。1920年代、石油ランプの灯りで夜を過ごす時代から電球に移り変わっていく中で、電球の眩しく冷たい光を温かみのある人に優しい光にしようと考えたポール・ヘニングセン。それから数十年に亘って追求し続けることで理想とする照明へ辿り着いたのです。

 そのようにして生まれた『PHランプ』だからこそ、それから約100年が経過した現在でも古さを感じさせないデザインで世界中の人々を魅了しているのです。


 豊かになった時代に生まれたデザインの多くは、既にあるものをより機能的にしたり、流行の形に変えたものばかりのような気がします。機能的なものはより便利なものへ取って代わられ、流行のデザインは時代と共に廃れていく...

 本当の名作とは人の普遍的な欲求を満たし、それがあるだけで価値を見い出せるもの。そのような名作との出会いが、私たちの人生を少しだけ豊かにしてくれるような気がします。



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