北欧の冬はとても寒い上に朝9時頃になってようやく明るくなったと思うと15時には外はもう真っ暗。おまけに外は死ぬほど寒い....そのような厳しい環境が北欧諸国の人々にどのような影響を与えたのでしょうか。
多くの時間を室内で過ごす彼らのライフスタイルからは、「室内をいかに快適で居心地のよい空間にするか」という暮らしの知恵とインテリアに対する意識が必然的に生まれたものだと考えられます。
北欧といえば世界の幸福度ランキングに、フィンランド(1位)、デンマーク(2位)、アイスランド(3位)ノルウェー(6位)、スウェーデン(7位)と上位を独占していることで有名ですが、中でもデンマークはアルネ・ヤコブセンやハンス・J・ウェグナー、ポール・ヘニングセンなど数々の巨匠たちを輩出するデザイン大国でもあります。デザイン史上に残る数々は名作はどれもシンプルでモダンかつ機能性と美しさを兼ね備えており、現在も世界中の人々を魅了し続けています。
20世紀初めまでの北欧家具といえば貴族向けの重くて大きな家具が主流でしたが、1942年に設立されたFDA(デンマーク生活協同組合)の家具部門『FDAモブラー』によって、「丈夫で、美しく、座り心地が良く、手軽な価格」の家具の製造を開始したことがデンマーク・デザインの歴史の始まりといわれています。
コーア・クリントが監修を担い、初代にボーエ・モーエンセン、2代目にポール・M・ヴォルタが代表を務め、ハンス・J・ウェグナーやアルネ・ヤコブセンなど名だたるデザイナーがプロジェクトメンバーに名を連ね、数々の名作を世に送り出しています。
「過去にとらわれないモノ」や「斬新なモノ」をデザインする”モダン主義”が主流だった時代に、コーア・クリントは異なる信念を掲げ、過去の歴史や様式を見直し、時代にあうよう再構成する『リ・デザイン』という信念を持ち、教育を通して数多くのデザイナーに多大なる影響を与えていきました。
『カール・ハンセン&サン』や『PPモブラー』といった世界的に有名なメーカーの家具は、椅子一脚でも数十万円するものも少なくありません。
一つ一つの家具が熟練の職人によるハンドメイドで長い時間をかけて作られ、細部にまで拘り、とても頑丈で耐久性にも優れています。シンプルで上質なデザインは流行に左右されることがなく、そのようにして作られた家具は何世代にも渡って使い続けることが出来るのです。
「古いものは見窄らしいとか」、「何でも新しい方が良い」といった日本人の考え方とは違い、欧米には古くから「古き良きもの」を大切に残していくという文化が根付いています。
デンマークにある世界的に有名なルイスポールセン社を始めとする多くの企業が100年以上前からある工場や倉庫だった場所を改修して使っているそうですが、「古い建物だからこそ価値がある」という考え方が一般的な欧州では、歴史のあるものを使い続けることが美徳でありステータスでもあるそうです。
非常に高価なことでも有名な北欧家具は長く使い続けることを前提にしているので、デンマークでは多くの人が初任給で椅子などの家具を買う習慣があるそうですが、それは日本人が椅子を単なる道具だと捉えているのに対し、デンマークの人々にとっての椅子は”大切な場所”だと考えているからでしょう。
デンマークには『Hygge(ヒュッゲ)』という言葉があり、「居心地が良い時間」、「心が安らぐひととき」という意味で、デンマーク人が大切にしている価値観を象徴するものです。
また北欧に伝わる『Janteloven(ヤンテの掟)』は、北欧社会の特徴である「平等」の考え方に深く関連づいたもので、「アメリカン・ドリーム」のような一発逆転が可能な競争社会ではなく、「皆が働いて高い税金を納めて同じようなサービスを受ける」それにより「みんなが幸せになる」ことを目指す社会です。
彼らにとって大切なのはお金やモノよりも、「家族と一緒に過ごす時間」や「素敵なバケーション」であり、欲しいものを聞くとメルセデス・ベンツのような高級車やブランド品ではなく、新しい学びの機会や夏に家族と過ごす別荘なのです。
そのような様々な文化的背景を持つデンマーク社会では、常に全体のことを考えて行動するのが当たり前、アメリカや日本のように一部の成功者やお金持ちが「脱税したって暴露なければ構わない」といったことを容認するような風潮はありません。統計的にみても世界一汚職が少なく、そのような国民の高い意識と信頼関係に基づいて社会が成り立っているので、「高い税金を払ってでも社会に貢献しよう」という考え方の人がとても多いそうです。
そのような高い文化レベルから生まれる良質なモノづくりやデザインは、人々の購買欲を掻き立て消費させるためではなく、人々の生活の質の向上を実現させているのだといえるでしょう。
そのような環境がデンマークを始めとする北欧諸国の人々の精神的な充足感を与え、「お金」や「モノ」といった資本主義的な価値観に左右されない「人間の持つ普遍的な欲求」を満たしてくれるのだともいえるのでしょう。
『居心地のよい灯りと暮らす』
灯りは暮らしに美しい情景を生み出し、何気ない日常を特別なものにしてくれるもの。私たちは照明とインテリアデザインで豊かな灯りのある暮らしをご提案します。
IN THE LIGHT Lighting Design & Interiors
熊本県熊本市北区武蔵ヶ丘1-15-16
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