top of page

住宅の照明について

更新日:2021年2月22日

先日、念願だった照明とインテリアのショールームを無事にオープンすることが出来ました。これもひとえに皆様のおかげだと日々実感している次第です。


今回のショールームをデザインする中で、大きなテーマとして「照明から考えるインテリアデザイン」という考え方がありました。一般的に照明計画というと建築設計→インテリアコーディネイト→照明計画といったように、最後の方で決まっていくことが多くかと思います。しかしながら、既に決まった間取りや内装の後で照明計画を行った場合、照明の選択肢はかなり限定されてしまい結果的に画一的なプランになってしまいます。


そもそも日本における住宅の照明は作り手側とクライアントの両方が暗くなるのを恐れて、夜でも煌々として空間を選択しがちです。

全体を明るく照らす照明プランは、「誰がどこで何をしても対応できる」ということが最大のメリットです。部屋のレイアウトを変更しても部屋の片隅で何かをするにしても、隅から隅まで明るく照らされていれば、何の問題もありません。なので照明は出来る限り隅々まで明るく、照明の灯りを最大限に生かし、より明るく見せるために天井や壁は白く、床も明るい色のフローリングにすれば、天井や壁・床に光が反射してより明るくなります。


現在の住宅のほとんどはそのような考えで家づくりがされていて、これが最もリスク(クレーム)が少ない家づくりと言えるでしょう。

これまで多くの日本人がシーリングライトで隅々まで煌々と照らされる環境で暮らしていたので、自ずと家の照明は明るいのが当然で、暗いよりも明るい方が良いと思っています。


そのようなお客様に私がよく問いかけるのは「雰囲気の良かったホテルやお気に入りのカフェの照明はどんな感じでしたか?」。

多分、多くの方の印象に残っている照明はほの暗い空間の中に、必要な場所に必要な灯りが灯されていた場所ではないでしょうか。「ノイズは暗闇に消え、見たいものだけに優しい光が灯されている」そんな空間だったはずです。

住まいにおいても夜の灯りのあり方は変わりません。落ち着いた灯りの空間に暮らせば、自ずと生活にも落ち着きやゆとりが生まれます。そのような環境で暮らすことは決して不便ではないと思いますし、日々の生活をより充実したものにしてくれると思います。


「照明から考えるインテリア」というのは、実は「暮らし方を考えること」そのものなのです。

現代社会はあらゆる情報が蔓延していて、私たちは日中はさまざまなノイズに囲まれて暮らしています。そのような暮らしの中でせめて自宅に帰った夜の時間だけでも、一日の疲れをリセットするような環境と整えることはとても大切だと思います。


私は今回、ショールームデザインするにあたって2つの課題を設けました。


一つ目は「ダウンライトを一切使わない。」


これは今の照明プランのほとんどがダウンライトを使って全体を照らす、全般照明が主流であることに対する新しい提案です。当初のダウンライトは局所照明として全般照明の補助的な役割を担っていました。それがいつもまにか沢山のダウンライトで全体を照らすようななり、今ではダウンライトを使っていることがお洒落といった風潮もあります。


私は以前より全般照明ではなく、局所照明を提案しています。理由は前述の通りですが、それ以外にも天井から降り注ぐ光よりも、より手元に近い位置にある局所照明の方が眩しすぎず、痒いところに手が届く感覚がより便利で使い勝手も良いと感じているからです。多少、面倒でも必要なところに必要な灯りを設けることが大切だと思います。


二つ目は「白い壁を使わない。」


全般照明の場合は効率的に空間を明るくするには、壁や天井・床の反射を最大限に生かした方が良いのですが、局所照明の場合はそうではありません。かえって反射した光が余計なノイズを作り、せっかくの灯りの良さを打ち消してしまいます。ショールームではオークの突板を使ってしますが、壁際に置いた照明の灯りを柔らかく反射してくれて、より灯りの質を高めてくれます。またチーク材特有のやや赤みがかった木の色が、灯りによってオレンジから赤色へ綺麗なグラデーションを描いてくれます。


新しいショールームではこのように、住まいにおける照明のあり方を始め、ライティングデザインからインテリアデザインまで新しい住まいの提案を沢山散りばめています。ぜひ一度ご覧いただいて、これからの住まいづくりや暮らし方の参考にしてもらえればと思います。


住宅照明計画

最新記事

すべて表示
bottom of page