人にとって光は最も大切な要素です。光がなければ暗闇にいるのと同じで、周囲にあるモノの色や形を認識することはできません。建築においても光は重要で、室内にどのように光を取り入れるかは多くの建築家の方が頭を悩ませるところでしょう。
安藤忠雄氏の”光の教会”のように薄暗い室内に僅かな光を特徴的に取り込む建物を見ると、まさに光が空間を決定づけるといっても過言ではないはず。
光が空間に与える影響が大きいにも関わらず、家庭の夜の灯りは隈なく明るいの一辺倒。昼も夜も隈なく明るいのは季節に四季がないようなもので、それではあまりにつまらないのでは。
昭和初期に谷崎潤一郎氏の書いた陰翳礼讃には、「檐のきを深くし、壁を暗くし、見え過ぎるものを闇に押し込め、無用の室内装飾を剥ぎ取ってみたい。それも軒並みとは云わない、一軒ぐらいそう云う家があってもよかろう。まあどう云う工合になるか、試しに電燈を消してみることだ。」と締めくくられている。
電灯の普及によって住まいの灯も西洋化していく中で、明るいばかりが必ずしも良いわけではなく、仄暗い中の僅かな灯りにこそ日本的情緒があるのだと。
先に挙げた”光の教会”は、黒く塗装されたインテリアと壁いっぱいまで切り込まれた十字架から差し込む光が印象的だ。これは安藤氏が幼少期に見た、暗い長屋に差し込んだ一筋の光に影響を受けたと語っている。
昼も夜もあまり変わり映えのしない、ただ明るいだけの住まいの灯りは、まるでインスタント食品の並んだ食卓ような味気のないものになってはいないだろうか。
LIVING WITH LIGHTS | 美しい灯りと暮らす
IN THE LIGHT Lighting Design & Interiors
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