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いい飲食店の条件とは

執筆者の写真: ノグチユウイチロウノグチユウイチロウ

更新日:2月3日

いい飲食店の条件には、料理や飲み物が美味しいとか、サービスが良いとは色々あると思いますが、本当にいい店なら何度も通いたくなるもの。どんなに美味しくても居心地が悪ければ、再び行こうとは思わないし、ただお腹を満たすためだけなら他にもいくらでもある。料理が美味しいのはもちろんだけど、店の雰囲気を始め、そこで働く人や集まる人も含め、そこにしかない独自のカルチャーを感じる場所。そんな飲食店にこそ魅力を感じる人は少なくないはず。


今は昔よりも美味しい料理を出してくれるお店も、世界中のいろんな料理を出してくれるお店も増えました。しかし、人気のある店はどんどん事業を拡大してチェーン店化。マクドナルド、ケンタッキー、スシロー、丸亀製麺、吉野家、ジョリーパスタなど、画一的な店が増え、合理化の結果、人の手を介さないようになってきたことで、お腹を満たすこと以外の価値が失われてしまっているように感じます。


その中でスターバックスが全国に店舗を増やしてきたのは、それが単にコーヒーを提供するだけではない価値を提供出来ていたからではないでしょうか。他のチェーン店と比べると、スタッフが客と積極的にコニュニケーションと取ろうとする姿を見かけるし、実際に店舗でそのような体験をしたことがある人も多いと思います。


普通、飲食店では食べ終えたら早々に席を空けないと居づらくなることが多いが、スターバックスではコーヒー1杯で長時間居ても居づらくなるようなこともないし、店内で仕事や勉強をしている人の姿も頻繁に見かけます。店内にわざわざ場所を取るようなラウンジチェアが置かれていたり、充電設備が充実しているのも、リラックスして寛いでもらいたいという店の考えの表れだ。


店内に流れる音楽も一般的なお店よりも音量はやや大きめに感じるが、静か過ぎると会話しずらくなるし、ちょっとした物音や他人の会話も気になってしまうことへの気遣いだそうで、ジャンルもボーカルの入っていないジャズやクラシックが中心で、こちらも会話の邪魔にならないように配慮しているのだろう。


最近は慣れてきたのかフラペチーノのようなものが増えたせいか、以前のように店内にコーヒーの香りが立ち込めるというほどの印象はなくなってきたのですが、店にとって店内の香りも雰囲気を作る大事な要素。


多様な人々が自分の社会的立場を気にせず気軽に集まり交流できる場がサードプレイスの特徴で、フランスのカフェ、イギリスのパブ、イタリアのエスプレッソ・バーなどがあります。スターバックスもこれらのサードプレイスを意識して展開しており、ハワード・シュルツがイタリア・ミラノのエスプレッソ・バーに感銘を受けて、このような場をアメリカにも広めたいと考えたのが始まりです。


スターバックスの店内は、居心地が良く、リラックスできるようにデザインされています。快適な椅子やソファ、落ち着いた雰囲気のインテリアや照明が心地よい雰囲気を作り出しています。店員さんもフレンドリーで、お客様一人ひとりに気を配ります。また、Wi-Fiも無料で利用出来るので、仕事や勉強する人にも最適です。さらにコーヒーを自分好みにカスタマイズでき、これらのきめ細かなサービスが顧客に特別な体験を提供します。


私が少し前から通っているのが、ぶっきらぼうな印象の店主が一人で切り盛りしている小さな郊外のレストラン。全部で20人が入れる程度のこぢんまりとした一軒家レストラン。店内は昼間でもやや薄暗く、夜も小ぶりなアンティークのペンダントランプがテーブル上に配置してある程度で、まるで映画に出てくるような外国のダイナーのような雰囲気。明る過ぎない店内では、他の客や余計なところに視線がいかない分、かえって居心地がいいものだ。


アメリカ料理が中心で、ハウスサラダ、フィッシュ&フライ、ポーク&ビーズ、クラムチャウダー、コーンブレッドなど、意外と日本では馴染みのない料理がメニューに並ぶ。それを地元の食材を使い、仕入れから仕込みまで、全部店主が一人でやっているのだから、手間ひまがかかるのも納得。


そうして作られた料理は、アメリカではお馴染みのヒースセラミックスやファイヤーキングといった食器に盛られ、店内に流れる音楽はエルビス・プレスリーだったり、ジャズだったり。飲食店の音楽といえば普通は有線でも流しそうなものだが、20〜30分毎に裏返す手間がかかるアナログレコード。これも料理同様に、利便性よりも雰囲気を大切にしている店主のこだわりが感じられるポイントの一つ。


雑多になりがちな厨房は、普通は客から見えないような場所に配置するのだが、こちらの店はオープンキッチン。一人で切り盛りするからそうせざるを得なかったのだろうけど、カウンター席から見渡せる厨房には、こだわりの調味料の数々が置かれ、調理前の食材の保管具合もわかるので、ある意味では安心安全ともいえる。何よりも店主が一人でバタバタしながら料理を作る姿は、見ているだけでも興味深く、ある意味エンターテイメント性すら感じる。


リラックスした雰囲気に、こだわりの美味しい料理、そこに店主とのちょっとした会話が加わり、食事の時間をより楽しませてくれる。このように心からくつろげ食事を楽しめる居心地のよいレストランは、外観からだとよく分からないので、知らない人にとってはやや入りづらい感じがあるでしょう。しかし勇気を出して入ってみると、食べること以外でもきっと興味深い体験が出来ると思いますよ。


1986年にイタリア・ローマのスペイン階段にマクドナルドがオープンしたことがきっかけで、ファストフードが伝統的な食を脅かすものとし、カルロ・ペトリーニにより地域食材を用いた伝統的で多様な料理を楽しむ「スローフード」が提唱されました。「スローフード」とは、その土地の伝統的な食文化や食材を見直す運動のことです。


また、1989年にアメリカの社会学者レイ・オルデンバーグが、自宅や職場とは異なる、居心地の良い「サード・プレイス」という概念を、著書「ザ・グレート・グッド・プレイス(The Great Good Place)」の中で提唱し、アメリカにおいて人々が家庭と職場を往復する生活に追われてしまっていたのに対して、ヨーロッパではパブやカフェが、飲食目的のみではなく人々が自由に交流する場として重要な役割を果たしていることに着目したものです。


生きることに欠かせない食だからこそ、「Where(どこで)」「Who(誰から)」「What(何を)」「How(どうやって)」ということが大切で、ファストフードや合理主義の発達が、単に食べ物を消費するだけではなく、食べるということの意味や価値を再認識させてくれます。


ファッションは洋服を暑い寒いを補うだけでのものではなくしてくれるし、インテリアは家を雨風を凌ぐだけの場所ではでなくしてくれる、同様に食事もお腹を満たすためだけでないはずです。それらはどれも贅沢をする必要はなく、ほんの少しの気遣いによって変わるものです。


スターバックスも一見すると普通のコーヒー店とほとんど変わりませんし、前述のレストランも高級な星付きレストランではありません。ただ、それらに共通するのは、「Where(どこで)」「Who(誰から)」「What(何を)」「How(どうやって)」という所に、他の店よりも少しだけ気を遣っているということのような気がします。


LIVING WITH LIGHTS | 心地よい暮らしの照明術

IN THE LIGHT Lighting Design & Interiors

861-8001 熊本県熊本市北区武蔵ヶ丘1丁目15-16


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