• Yuichiro Noguchi

白い壁の功罪

 1800年代の後半、装飾は豊かさの象徴であると持て囃され、豪華なドレスを見に纏い、大きな宝石や純金のアクセサリーをジャラジャラとつけた貴婦人さながらに、過度な装飾を施した建築物を求められた時代があります。

 1908年にアドルフ・ロースによる「装飾は犯罪」であるとの宣言に始まり、その後の合理主義やモダニズムによってそれまでのの装飾文化は衰退していくのですが、今の時代はその正反対にあるように感じるのです。


 1920年代以降、これまで数え切れないほどに作り出された真っ白な壁と天井に覆われた無機質な空間は、もはやモダニズム時代の安易な模倣や劣化コピーでしかありません。

 そこには「なぜ他の色ではなく、白なのか」といった問いよりも、ステレオタイプに「白は何にでも合う」とか、「白は飽きがこない」といった安易なものしかありません。


 そのような時代ゆえに、その白い壁や天井と取り除いた内部から現れた構造材はこれまで目にしたことがない新鮮な素材や形であったのでしょう。


 装飾はおろか本来なら必要な仕上げ材ですら剥ぎ取り、室内には無塗装のコンクリートや木材、鉄骨やLGSといった構造材が剥き出しのまま。元来は壁で覆われていた構造材やコンクリートの躯体に残ったGLボンドの跡ですら、現場を知らない若いデザイナーらにとって、白い壁の時代にはなかった装飾のように映るのでしょう。


 しかし、そのようなコンセプチュアル・アートやミニマム・アートのような空間は、時代の流行と共に忘れられていくもの。実用性の伴わない過激なアート作品は、そのインパクトと引き換えに短命でもあるのです。

 かつてのポストモダンのように過激な建築物の賞味期限は決して長くないのです。


 完成した建物は建築物としての寿命を全うするまでの間、その場所にずっと存在し続けなければなりません。まして建物である以上は人に利用されなければ、その存在理由すらなくなります。


 過激さを売りにした建物の多くは、使いづらく、住みずらいものです。流行の最先端を行っている時はそれでも価値はあるのかも知れませんが、流行が過ぎれば人々は離れていくのです。


 かつてアドルフ・ロースが唱えたのは、「建築物は一過性の流行や模倣ではなく、世の中が変化してもそのまま存在する。時代精神が変わっていっても建築物自身は変わらない最も保守的な性格をもった芸術であり、それゆえに建築家は単に自分が生きる時代のために建築を設計するのではなく、後世の人々にもその建築家が遺した作品を享受するということを理解する必要がある。」ということなのです。


 そのような背景をもとに生まれたモダニズムを象徴する白い壁が、現代では安価な真っ白なビニル製のクロスに置き換わり、およそ100年続いたその長い役目を終えようとしているのです。


 

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