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執筆者の写真ノグチユウイチロウ

陰影をデザインする

照明は明るく照らすだけのものではありません。

見せたいものに光を当てると同時に、見せたくないものを隠すこともできるのです。


演劇やコンサートでは開演と共に、場内の照明が消え、舞台にスポットライトが当たります。それによって観客が自然と舞台に集中できるようになるのですが、もし客席の照明がついたままだったらどうでしょうか。


上質なホテルや飲食店も同様に照明を上手に使うことで、食事を始めとするさまざまな所作の質を高めています。


それに対して、私たちは家の中となると途端に部屋の隅々までが明るいのが当たり前、明るければ明るいほどに良しとなってしまいます。


しかし、食事の最中に雑然としたキッチン周りが気になったり、リビングでくつろいでいるときに床の埃が気になったり、脱衣室に落ちている髪の毛が気になったり...勉強しているはずが、いつの間にか近くにある他のものが気になったりするものです。


昼間、外部の光によって室内のいろんなものが見えてしまうのは仕方ないことですが、夜のくつろぎの時間ともなると、できれば余計なものは気にしたくないものです。


本来、照明には何かを照らす目的があって配置されています。

それは、ダイニングテーブルの上に並ぶ料理であったり、ソファーに座る人の手元の灯り、キャビネットの上に置かれたお気に入りのものを照らす灯りや、枕元で読む本の灯りなど、さまざまな所作に必要な灯りを必要な場所へ。


しかし、せっかくお気に入りのペンダントライトでダイニングテーブルの上を照らしても、天井から降り注ぐダウンライトの光が強ければ、そのペンダントライトの光は掻き消されてしまいます。


住まいの照明は、舞台で例えるなら役者に向けられたスポットライトのようなもの。舞台上の誰もいない場所を照らす照明がないように、家の中でも目的のない照明の光は、余計な気を使わせるだけの不要な存在です。


一日中、ドラマチックな空間で過ごす必要はありませんが、せめて夜のくつろぎの時間だけでも、陰影と奥行きのある素敵な空間で日常を過ごすことができるとしたら、それだけで普段の生活が何倍も豊かになったように感じるものです。


谷川俊太郎氏の随筆『陰翳礼讃』にもあるように、全てが見える世界よりも、見えない部分こそが人の想像力を掻き立て、見える部分をより魅力的に見せるのです。


「何でもかんでもよく見える」のも悪くありませんが、むしろ暗がりを積極的に利用することで空間の余計なノイズを消し、本来の見たいものに意識をフォーカスさせる。


そんな”心地のよい日常”を過ごすという贅沢を手に入れてみてはいかがでしょうか。



 

『灯りを愉しむ』をテーマにした、”照明から始める家づくり”というこれまでになかった発想で、美しく、心地のよい暮らしのご提案をいたします。


熊本・福岡を中心に照明、家具を含むインテリアの設計・施工から、戸建・マンションのリフォーム・リノベーションまで幅広くを承っておりますので、まずはお気軽にご相談ください。


《IN THE LIGHT Lighting Design & Interiors》

〒861-8001 熊本県熊本市北区武蔵ヶ丘1-15-16


https://www.inthelightinteriors.com/




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