• Yuichiro Noguchi

インテリアデザイナーは単なる装飾主義者か

更新日:11月20日

建築とは壁や天井、床によって室内と外部の関わりを定義することに他なりません。他方でインテリアデザインは室内において人との関わりを定義することと言えるでしょう。


建物の表面には仕上材のテクスチャーと色が現れ、それによって空間の印象は大きく変わります。中でも色が与える影響は大きく、人のさまざまな感情を引き出すことも可能です。一般にはこれまで白は清潔感があり、色による影響が最も少ないとも考えられてきましたが、最近の研究では白色は緊張感を高め、自然治癒力を低下させるということが判ってきたそうで、ある研究では ①白い壁の部屋、②木の壁の部屋、③両方を組み合わせた部屋 のそれぞれで過ごした患者の中で、③で過ごした患者が一番早く退院したという結果が出ており、無機質な空間よりもインテリアの多様性が体の治癒力を高め、寿命にも影響を与えることが実証されています。


木やコンクリート、ガラスにプラスチックといった素材も同様に自然素材と人工物でも変わります。プラスチックは第二次世界大戦時の金属不足により代用品として普及していくのですが、金属よりも安価で使い捨てできる利便性から大量生産向きということで日用品を中心に広く浸透していきました。現在、多くの建築物の内装仕上げ材として普及しているビニルクロスの白い壁は、住む人よりもコストと利便性を重要視した結果であるとも言えるかも知れません。


天井に配置された沢山の蛍光灯やダウンライトなどの照明も同様で、真っ白な壁や天井はレフ板効果によって効率的に室内を照らすのには最適です。しかし、昼夜問わず明るい室内が人にとって最適な環境かといえば、必ずしもそうとは言えません。人にはサーカディアンリズムという自然のバイオリズムを持っています。日中は太陽の明るい日を浴びて覚醒し、夕方になる頃には夕焼けと共に住処へ戻って日中に疲れた身体と脳を休めるのです。これが動物が持つ自然なバイオリズムで勿論、人間も例外ではありません。自然に反して夜遅くまで覚醒したままでいることが人にとって決して良い環境であるとは言えないでしょう。


敷地によって建物のサイズが決定され、周辺環境によって窓の形が決定され、昼夜問わず電気によって明るさや空調をコントロールされた環境は便利で快適ではあるかも知れませんが、それらが人の心に作用することはあまりないのではないでしょうか。


窓の景色から四季を感じることは大切でしょうし、光の変化によって一日の移ろいを意識する。四季の中でも季節の中間にあたる春と秋が人にとって最も情緒的であるように、一日の中では明け方と夕暮れ時が最も美しいのです。単に明るい暗いだけでなく何事にも「よい塩梅」があるものです。


それはインテリアにおいても同様で、長らく真っ白でミニマムな室内が流行していましたが、行き過ぎた流行はすでに「よい塩梅」を通り過ぎて単に殺風景で無個性なものに感じられるのです。断捨離という言葉が流行して何でもかんでも処分したり、質屋やリサイクルショップが増えて何でもかんでもお金に換える時代です。人は思い出を残したがるものですが、それすら無くしてしまえばもはや人であることすら無くしてしまいそうです。


かつてヨーロッパの貴族たちがその豊かさを競って建築にたくさんの装飾を施した時代がありました。しかし行き過ぎた装飾文化はアドルフ・ロースによって「装飾は犯罪」と糾弾され、その後にモダニズムにより衰退していきます。何事も「よい塩梅」を過ぎると後は衰退の道を辿るものです。もしかすると100年続いたモダニズムもそろそろ衰退の道を辿り始めているのかも知れません。


行き過ぎたモダニズムは人間らしさを失い、単に無機質で殺風景な空間を作り出し、そこで暮らす人は人ではなく、機械のような生活を強いられるのです。現代のデジタル化はまさに人を機械の一部に取り込んで行くような怖さすら感じられます。


インテリアの多様性は人間らしさの追求に他なりません。十人十色という言葉があるように人はそれぞれ個性が違うもの。合理主義的なモダニズムとは相反する部分にこそ人間らしさが垣間見れるのです。まさにインテリアにおける装飾はその人のアイデンティティそのものとも言えるでしょう。インテリアデザイナーの本来の仕事は単なる装飾家ではなく、住み手の個性を見出しそれをインテリアに反映させ、住み手が自分らしく心地よく暮らせる空間を提供することに尽きるのではないでしょうか。


欧米のセレブリティたちの住まいではまさにそのようなインテリアをたくさん見ることが出来ます。そこには決して金銭的に余裕があるからといったことだけでない、綿々と受け継がれてきたヨーロッパの装飾文化の歴史を感じるのです。残念ながら日本においてはそのような文化を感じることが少ないように思います。戦後、貧しかった日本は安物の大量生産品を求めて、スクラップ&ビルドを繰り返してきた結果、戦前の面影も歴史も途絶えてしまったように思います。もしかすると未だに日本は戦後レジュームから抜けきれておらず、物質的には豊かになっても未だに心は貧しいままなのかも知れません。





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